・・・・・・泣く子も黙る・・・・・
場末映画館
支配人奮闘記
<昭和から平成の映画館記ノンフィクション>


  「場末の映画館には猫さえ来ない」

   =場末の映画館支配人が語る33年雑記


          
 <第1章・バイトに映画館を選んだ理由>



“場末の映画館。”


薄ら寂しい響きである。

ただ、そこはかとなく漂う世界観がある。

 

1973年.

時代は経済高度成長期の最中。

映画は、衰退の一途をたどっていた。

 

私は、駅前ながら場末の映画館に向かっていた。

目的は映画ではなく、
そこでバイトをしたい、ただそれだけだった。


商店街に面してなく、人影もまばら。

映画館もひっそり、存在感もなく、わびしく佇んでいた。

 

その映画館に過去、
1回しか足を運んでいないのだが、

何故か導かれるように・・・。


事務所を訪ねると、50過ぎの禿げ上がったおっさんがポッンと

デスクに座っていた。

私は、おずおずと、「あの~・・バイトをしたいんですが。」と
いきなり申し込んだ。

そのおっさんは、間髪入れず、

「お願いします。」
なんと、即答だった。

不思議な光景だった。


それが、
僕の映画館人生の始まりだった・・・。

 

 

 

さかのぼること、5年前。

父が教師という、世間体的には生真面目な振る舞いで、
大人しく過ごしていたが、
中学時代に、学校帰り、地元のさびれた映画館に
「ゴジラ対メカゴジラ」をこっそり見に行った。(たぶん学校規則違反)

映画の内容は、おなじみゴジラ・パターンで驚きもなかったが、
2本立だったので、興味のない併映の「海底軍艦」も見る事にした。

これがこれが、映画の内容は、どうでもよく、
胸がドキドキしたのが、釘づけの状態になったのは、
映画の海底軍艦と対決する、地下帝国の女王様の美しさに、
初心な中学生にありがちな、うっとり。
それは、今でも、女性のタイプのひとつとなり尾を引いている。

とんでもなく、横道、逸れました。


やがて、高校生となり、
”めざめ”の年頃を迎える。
その”めざめ”は、性のめざめではなく、
映画の目覚めである。

映画配給会社の衰退で、大映と日活と苦肉の策で共同配給し、
”ダイニチ”として出発し、

大映は、そこで、北海道出身で田舎育ちの15歳の少女、
関根恵子(現在・高橋恵子)をデビューさせた。
その映画のタイトルは、「高校生ブルース」。

意味深なタイトル。
私は、このポスターに、主演の関根恵子の顔に魅了された。

片田舎から、2時間かけて、名古屋の映画館に見に行く。
初主演ながら、ヌード、白いパンティに透けたアンダーヘアー、その上、
透け透けネグリジェシーンの数々、もう内容は、どうでもよく、
ひたすら関根恵子、
15歳とは思えない大胆な演技は鮮烈で美しく、初々しい関根恵子に、
私はぞっこん。

ぞっこん!もう、”ZOKON LOVE”です!(オマエは、シブガキ隊か!古い!)
これが、予想に反して、スマッシュヒット。
関根恵子は新人にして、スポットライトを浴びました。


次作の「おさな妻」では、

かなり年の差がある大人の妻になるというコンセプト。
とことん、関根恵子を見せる。
初夜は見所、抱かれる恵子。そこは上手く波のシーンをかぶせながら・・・

けなげに抱かれる恵子、絶対タイプ。
ぽっちゃり感が大好き男、もう虜になる。

この愛するが故の熱量が、この映画のテーマ曲レコードを買うし、
何を血迷ったのか?関根恵子がレコードデビューの「初めての出発」を

買う快挙、暴挙。聞いたら、天地がひっくり返るほどのド下手~!
当時は、レコードで、そう頻繁に買える額ではなく、
親のスネをかじって、泣きついて、手に入れてました。
勉強の為、”ドリルを買う”の名目です。
”関根恵子のレコードを買う。”と、素直に言えば、
虐待を受けそうなものです。いや、折檻かも知れません。
当然、膝の上に重い石を、三段も乗せられそうですか・・・。

それにしても、可愛い。
そうなると、映画のポスターも欲しくなる。
恵子の大きなポスターが欲しくなる。

そんぼ思いは、大胆な行動に出てしまう。今じゃ、そんな事、出来ないが、
どれだけ好きだったかを推し量って下さい。
何も恐れず、思い切って、映画会社の大映に手紙をおくり、

関根恵子のポスターを欲しいと哀願すると・・・


それが、それが、な、な、なんと、大映から、
大量の関根恵子の
ポスターが、どさりと届くから、
いやはや、驚き桃の木!この木、何の木・・・(日立のCMか!)


「うれぴー!」と言いたいが・・・

その当時、ノリピーはいない(これも古い!)、すみません。

 

とにかく、映画会社の大映も太っ腹。何の見返りもないのに。

ただ、私の熱意が通じたのか!
今では、感謝です。奇跡です。

 

この関根恵子のポスターの件もあり、なおさら恵子に溺れていく私・・・。

新作をことごとく、「新・高校生ブルース」、「樹氷エレジー」、「遊び」等と、
関根恵子作品を全作、見まくる。


ここまで書いて、映画を好きになったのではなく、

ただ関根恵子をアイドルとして、

映画を見る、ただそれだけのことだったことかもしれない。


そのうち、予告編で、梶芽衣子にも目が行き、

梶芽衣子と和田アキ子主演の無国籍アクション「野良猫ロック」と

永井豪の漫画の映画化「ハレンチ学園」の2本立まで見てしまうハメに・・・。

こうなると、勢いはとどまらず、手当たり次第に映画を見ていくことになる。


何故かわからないが、見る作品が無くなると、
高校生ながら、
松竹映画の松本清張原作ミステリーサスペンス、
岩下志摩主演、中尾彬共演の「内海の輪」という大人な映画まで
見るおマセぶり。

でも、当時の経験値から、不倫の意味がわからん。

自分のオナニーで精一杯なのに、
大人の恋愛事情はちんぷんかんぷん。
(余談:この作品、50歳過ぎて再度、DVDで見たが、やっとわかる、いい!)


邦画から始まったのが、
大人びて、洋画にも食指が伸びる。


片田舎から、名古屋まで足を運び、名宝スカラ座(懐かしい響き)で、

トレシー・ハイドの初々しい笑顔(特大ポスターを買った)、

ビージーズの爽やかなメロディが今も心に残る、「小さな恋のメロディ」を。

トロッコで二人が恋の逃避するラストシーンがたまらない、
「小さな恋のメロディ」に、はまっても、

ただし、“愛とは決して後悔しないこと”のコピーが話題で、大ヒットの
「ある愛の詩」は、お子ちゃまには、さっぱりわからない。


上記の作品含め、高校生時代は、
とにかく、休みになると映画三昧。

 


大学生になると、さらに火が付く。

いや、火が付いたのではなく、学校に行くのが嫌で、映画で時間つぶし。

「ポセイドンアドベンチャー」のパニック映画に始まり、

燃え盛るパニック映画の「タワーリングインフェルノ」、

クリント・イーストウッドの「ダーティハリー」のマグナムの銃口にうっとり、


「エクソシスト」では、

グランド劇場の映画館前の行列に2時間も並ぶハメにもめげず立ち見で見た後、

すぐさに、名古屋球場で、引退を決めた長島のホームランを

目の当たりにした、あの思い出は懐かしい。

(余談:大好きな長島選手のホームランボールが近くまで飛んできた。)

 


あの時代。
授業をさぼり、映画を見まくり、洋画の3本立は当然。

名宝シネマで。
「ポニーとクライド俺たちに明日はない」、「イージーライダー」、「明日に向かって撃て」、「バニシングポイント」等のアメリカニューシネマ旋風、

「フレンチコネクション」や、「ブリット」などの刑事ものカーアクション、



恋愛ものは「ジエレミー」、イタリア映画「青い体験」、当時のイタリア映画は
お色気もの青春映画が多く、
期待せずに見た「家庭教師」で、
主演のオッタビア・ピッコロの可愛さに目がくらむ。
とても、とても可愛い!

恋をしたかのように、オッタビア・ピッコロ見たさに、
この映画を見に何度も足を運び、いったい、何度、見たことやら・・・
(現在、手元には、手に入れたDVDが宝物、やっぱ、今も可愛い。)

他にも、カトリーヌ・ドヌーブの「モンパリ」などの大人びた作品も・・・

ドヌーブも、とても綺麗だった。



だが、映画を見る作品の嗜好の転機が訪れる。


ある映画館で、仕方なしの暇つぶしの映画「ドラゴン目撃者を消せ!」を見た。

これは当時、ブルーリ・リーの革新的アクション、「燃えよドラゴン」で

一大ブーム!ドラドンブームの真っ只中、何でもドラゴンがわんさか。

ジーミー・ウォングの「片腕ドラゴン」、「女ドラゴン」等、
揚句は「子連れドラゴン」とくる。

その勢いはとどまらず、ハリウッドまで、黒人のカンフーものがコレ。

これが、まあ、つまらん、つまらん。


当時は映画館は2
本立が当たり前で、期待感ゼロで暇つぶしに、
併映の「セルピコ」とやらを見る。

それがそれが、何を言わんや・・・。

ニューヨーク市警の腐敗に、同僚、上司を
敵に回してまで、
命がけで立ち向かう、正義を貫く一人の警察官の姿を描く。

それも実話の映画化とは。おったまびっくり!
何これ??????映画って、


映画は、娯楽作品ばかりと思い込んでいたのが情けない。


見たら唖然!いや、驚愕!

ラストの”セルピコ”こと、アル・パチーノの悲しげで退廃なイメージ。

監督は、世界の巨匠、シドニー・ルメット。

映画の世界に、こんな強烈なメッセージとパッションが魂をつらぬく!

唸る!す、凄い!!!

このようなメッセージ色が強い映画があったのだ。


映画の世界観が変わる。

これを境に、映画の見方が変わった。



こうなると、あのキューブリックの「バリーリンドン」にも目が行くし、

ニクソンの盗聴問題をすっぱ抜いた新聞記者の「大統領の陰謀」、

アル・パチーノの「狼たちの午後」等々・・・。

イタリア映画、フェリーリの「道」だって見る、
フランス映画、トリュフォーの「アメリカの夜」も見る。
映画の世界が広がった。
コアで芸銃的な映画の良さも認識してきた・・・。

 

しかし、若さもあって、娯楽作品に、真っ先に目が行くにはしょうがない。

その頃、スティーブン・スピルバーグのテレビ映画「激突!」が、
アメリカで大評判となり、日本では映画サイズにして劇場で公開。

これが映画マニアに受けた。

ストーリーは、些細な事から、巨大タンクローリーが一台の車を
執拗に追い詰めていく・・・。

この怖さがたまらない。


これが、評価され、スルピルバーグ、
遂に初映画監督デビューした作品が、「
シュガーランド・エキスプレス」。

それは、全米タイトルだが、
邦題は、何と、前作にのっかり、「続・激突!カージャック」とくる。


何だ、コレ!情けない、安易なタイトル。

だが、内容は実話を基にした完成度の高い映画。
子供の親権を取られた、札付き男が、女房が結託して刑務所を脱走し、
里子に出された子供を取り返すため、テキサスからシュガーランドまで
一人の警察官を巻き込んで逃走劇が繰り広げられる。

カーチェイスを随所に娯楽性を入れながら、人間の心の機微を描いた作品。
スピルバーグの芸術性と娯楽がふんだんに
融合した名作であった。
スピルバーグを、”娯楽作の申し子”と思われてるが、
この映画は、永遠不滅のスピルバーグ、最高の傑作である。

 

このように多種多様な映画を見出したのはいいが、

映画代もバカにはならない。

「そうだ、京都へ行こう」ではなく、

「そうだ、映画館でバイトしよう!」で

お金と映画の一石二鳥を狙う。

 

 

そこで、バイト先に目をつけたのは、

上記の「セルピコ」を上映していた映画館。

それが、タイトルにある通り、場末の映画館。

うらぶれた感がある、人通りのない道沿いの映画館だった。

 

 

いきなり事務所に訪ねると、前記にも記したが、

ひとりの50歳位のおっさんがひとり、

私が、「ここで、バイトしたいんですが・・・」を言うなり、

間髪いれず、「お願いします。」の即答に口あんぐり。

ちょうど、前の事務員が突然辞めて困っていたところに
私が現れたらしい。


これも、縁か。

「すぐに出来ますか?」と、これまた、早い。

履歴書は持っていなかったので、しばし面談。

ちょっと順序は違うが、聞けば同郷。深入りすれば、

そのおっさんの妻と、僕の母が出身高校の同級生とわかる。

奇遇。

 

 

僕の父の先生話も花が咲く。

聞けば、おっさん、いや常務。

この映画館。本社が名古屋で、今池に高僧自社ビルを所有し、
映画館経営名古屋中心に8館経営と不動産事業と手広くやっているとのこと。

親族経営で、弟が社長で、そのおっさん、いや常務が、

地元の代々続く家の長男だが、

個人的に、他にも自ら工場経営しているので、この立場でいるらしい。


とにかく、すぐさに仕事を始めて欲しいし、毎日でもというが、

こちらは大学生の身。

結構ヒマなのだが、親を知ってるとあっては、

「いいです。」とは言えない。

親に、どう耳に入るかわからない。


では、私の今後の予定表を手渡しますということでしたが、
それでも、唐突に、こちらの事情も聞かず、

「さっそく、今日からやって下さい。」のお願い。
この急な展開には、たじろぐ。
さりとて、今日の予定は現実には空いているから・・・
いやはや・・・今から、早速、仕事を始めることになる。
不思議な話です。でも、”縁ですネ”。

しかし、どんなバイトかな?と、不安がよぎる・・・。

 

早速、
初めての映画館のお仕事が、看板の上映終了の映画ポスター剥がしとくる。
まあ、いいか。

私の実家は兼業農家でもあるから、幼少から田畑を手伝ってきたので、
肉体労働は、いとわない。


ノリ張りのポスターが頑固なまでに、手ごわいぐらい剥がれない。

結構、疲れるが、なんか、心地いい。
映画館の初仕事のアナログな手作業の労働も、映画館にふさわしい初日、
これが、あまりにキレイ仕事なら、また違った感覚になっただろう。
人のいやがる事から始めれば、後は、何も怖くない。

 

で、それを、およそ1時間で終えて、
次のお仕事は?と、聞くと、


映画の新聞広告を作ってくださいとのこと。

「え~っ!広告ですか?経験ないですよ。」


「これを参考に。」と、
今までの当館の過去の新聞広告のファイルを出される。


でも、やったるわい!と、とりかかる。

過去、バイトで、広告に携わることはなかったが、
ワクワク感の方がまさっている。
面白そう。

そう、好奇心が、不安を押しのける。

見よう見まねで最初の初広告製作は、
ブルース・リー主演「燃えよドラゴン」の空前の大ヒットで、
香港の今まで公開されたカンフー映画をこぞつて日本の各配給会社が
競い合うかのように買い付け、日本中は、カンフー映画一色の様相。
その流れの中で、日本人ながら香港でスターに登り詰めた倉田保明主演の
香港映画「帰って来たドラゴン」と、

「ドラゴン世界を征く」「復讐のドラゴン」と腹いっぱいのようなドラゴン3本立。
やれやれ・・・。
まあ、広告、作るか。


中日新聞1段二分の一(専門的でわかりにくいが横19.2センチ縦3.3センチ)の

とても、小さな広告が手始めだった。
これが意外にも面白い。

なんとか作り終え、今日の仕事は終えたので、
帰り支度をしてると、


そのおっさん、雇われたのですから、訂正、”常務”は、

おずおずと、一枚のはがきサイズの紙を私に差し出してきた。


「これ、映画の試写状です。名古屋の試写室ですが、
大学生活の合間で良かったら、見て来てください」と。


見れば、「がんばれベアーズ」の映画の試写状。

「ある愛の詩」で有名になったライラン。オニールの愛娘、

ティタム・オニールと名優ウォルター・マッソーの
少年野球感動ドラマです。


「いいじゃないか!見たい!」と、
よく、試写状に目を凝らすと、

この試写状が、
よくある宣伝の一環で劇場で一般人に見せる試写会ではなく、

業界人用の試写会・・・。
「私ごとき、大学生が業界用の試写室に行っていいんですか?」と念を押すが、
本社から、電話を入れるとのこと。



とりあえず、行くことにする。当然、授業をさぼってのこと。(親が泣く?)
午後1時からなので、午前中、喫茶店や本屋などで時間をつぶし、

腹ごしらえの昼食のトンカツ定食をペロリ平らげて、いざ、行かん!


場所は当時、名古屋の毎日ビルの4階に松竹名古屋支社。
そこの1画に試写室がある。

おそるおそろ入る。
「未知との遭遇」である。

そこは、40席ほどの小さな業界用の専門の試写室。

大学生の立場上、周りの業界人らしい人たちに、
ちょい、いぶかしげられながらも、
試写状が、
”水戸黄門の印籠”に匹敵、


変な視線を浴びつつ、席に座る。

そら、そうだ、
周りは業界人らしい人ばかり。年配者が多い。

20人ほどがいる。

 

 

みな、この映画を上映予定の地方の支配人か、経営者か、

映画に携わる関係者、マスコミなどと、後にわかる。

見始めたが、何故か居心地が悪い。
親のすねかじりの学生の身。

大人の禁断の世界に迷い込んだか・・・


可愛く言えば、不思議の国のアリスの気分かな!(おまえは少女か!)

それは、さておき、
映画は面白い。感動する。

まだ、一般人が見てない、公開前の映画を見る快感、

そして、この席にいると、まるで、業界人気分になる。

映画を見終わり、
変な興奮、ドキドきが残る。
これが、映画人生の始まりの号砲とは、その時は予想だになかった。

とにかく、
その後のバイト自体は

新聞宣伝担当や、もぎり(切符切り)等を含め雑用もこなした。

また、相も変わらず、試写室にあししげく授業をさぼり足を運んだ。
いろいろな映画を見た。


その試写室で、今でも忘れならない事がある。

ブライアン・デ・バルマの出世作でもある「キャリー」を

見ていた時の事。

何とはなしにラストをむかえ、もう、これで終わりかと、

一瞬、下を見たときに起こった。

一体型の椅子がガクッと揺れると共に、私の椅子もガクッ!と、
地震のように揺れた。何事か起こったのか?


そう、画面では、いきなり、ラストで不意打ちのように
”あの手”が飛び出したのだ。

その衝撃に、驚き、皆の体が大揺れし、椅子が全体に揺れたのだ。


このシーンは、今のホラー映画の原点でもある。

現在は、これが主流で、油断をした時のショックシーンパターンである。

あろうことか、このシーンを見逃したのだ。不覚にも。

いずれ、VHSビデオの時代が来て、見たのだが・・・

あ~あの時、何故、見逃した!悔やまれる。



もっと、映画館の仕事内容に移そう。

この劇場は、この地区では、後発で、
思い通りの番組が組めていなかったのだ。

初期は、ほぼ、再映でお茶を濁したり、
洋画のピンク映画まで上映していたのだ。


当時、愛読書?の月刊明星のアイドル雑誌に、
売れ始めの井上陽水が、この映画館の看板の横で
立っている写真ページがある。

それも、その看板は、洋画のピンク映画3本立、

それが、物語るかのように、
その時の劇場は、場末の映画館にふさわしい?

映画のラインナップだった。

だから、このバイトするまでに、この映画館に、過去、1回しか、
足を運ばなかったのもうなづける。


だから、バイトするのも、本当に摩訶不思議。

やはり、そこで初めて見た、「セルピコ」という映画の強烈な影響は、

今となっては、確信である。

私が映画好きとわかると、
ここの支配人は、
「今後、どんな映画をかけたらいい?」と質問してきた。


これなんかどうですか?と言うと、
これは他の映画館だと、かなりの包囲網。


現在のシネコンと違って、1か所に7~8スクリーンもあるわけがなく、

ほとんどが1スクリーン勝負。だから、戦国時代。

 

大抵、各映画館は、密接に映画会社にとつながり、

あそこの映画館はワーナーブラザース作品(燃えよドラゴン、エクソシストなど)がメインとか・・・、あそこはCIC配給:当時、ユニバーサル、パラマウント、MGMの三社合同会社(トップガン、フラッシュダンスなど)、20世紀FOX映画(スターウォーズ、猿の惑星など)、ユナイト映画(ロッキー、007シリーズなど)、コロンビア映画:現ソニー(タクシードライバーなど)とか・・・


だから、大半の作品には、なかなか手が出せないのが実情らしい。

 


そこで最大の賭けに出たのだ。

あのスティーブン・スピルバーグ監督のアメリカで異常なまでの
爆発的大ヒット中のCIC配給「ジョーズ」
上映をすることにしたのだ。
大英断!

この映画には、
どの映画館も喉から手が出るほど手に入れたい作品。

しかし、ハイリスクな問題があった。


通常、封切り作品の映画会社との条件は、
売り上げの6割を上納するのが
大半だつたが、
この映画に関しては、全世界で驚異的な超大ヒットで、映画会社も強気。


なんと、2000万買い取りと提案してきたのだ。
これには、他の映画館も
なかなか手が出せない。

40
年前で、2000万円ということは、

当時、時給が400円ほどだったから、

今に換算すると4000万円ほどか・・・。


一興行、興収500800万円上がれば、御の字の時代に、

プリント代が2000万円、高値というより破格。
そら、みんなが二の足踏むのは当たり前。

 

だからこそ、打って出たのだ。

まだ映画を見ていないのに、この映画館、会社の肝も坐っている。
手をこまねいていたら、怖気づいていたら、石橋を叩いていたら、
大きな見返りもない。
ここが、勝負どころかみたか?上映決定!


当然、

三重県では1館のみの上映となった。
当時の洋画の公開は、ほぼ全米のヒット作品から、
日本は、三月~半年遅れが通例。

 

私は、公開三ヶ月前に、
業界人・関係者、メディアの為の試写会(この試写は特別で映画館を使用)、
超満員(珍しいこと)で、不安を覚えながらも見た。
初お目見え、どんな映画だと?と、話題騒然だから、なおさらだ。

 

これが、唸る。


前半1時間、肝心の”ジョーズ”が、鮫が、全然出てこない。

あのジョン・ウィリアムスの♪ジャンジャンジャン・・・♪の音楽だけで、

迫りくる恐怖をあおる。怖い!上手い!


これぞ、スピルバーグの原点、「激突!」のティストだ。

最後は、ドカ~ン!と解放的にエンディング!

まさに映画の王道だ。

 

映画はいい。

だが、アメリカで大ヒットしたからといって、何の保証もないのが興行。
早速に報告。
「大変な映画です!これは、絶対、当たります!」と言い切ったほどだ。


そして、遂に、公開日を迎える。

 

 

蓋をあければ、

度肝を抜く動員。


300席の劇場に1回上映に500人の立ち見(当時、立ち見は当たり前)、

まだ、入りきれない人が、次の回に切符売り場に長蛇の列。

その上、15回上映フル満員。

動員は1日、2500人。

それも、あきらめて帰る人、続出とくるから、恐ろしい。


異常なまでもの現象に立ち会う。
バイトを超える忙しさ、驚きのみ、

ロビーも人、人、ぎゅぎゅうづめで、身動きできないほど。

だから、仕事にならない。売店も人が多すぎて売れない。

ただ、飲み物の自販機は補充の連続、冷えてない!と、苦情が来る。

”すみません!すみせん!”の平謝り。


いやはや、大変!またまた大変なのが、

一回終了ごと人の入れ替えが、地獄の様相。

経営者は、満面の笑み、いや、満願の笑み、

そら、そうでしょう。
一大博打の勝負に勝ったのだから・・・


と、なると、不安になるのは、このフィルムの管理。

な、な、な、と、このフィルム、1日興行終わるたびに、

夜に警備会社が保管に来るという前代未聞の策。

そら、これを盗まれたら、大変ということ。

その不安も、この入りではうなづける。


私はバイトの身、その頃は、新たな人が(おじさんだが)入社し、

私の仕事は、新聞広告と、

映画試写を見る事、後は、作品のチョイスのアドバイス。



私は、ほとんど、大学にも行かず、バイト生活に明け暮れる。

映画館でなく、見識を広めるため
(本音は、車を買うため、女遊びの遊行費等が目当ては当然でしょう!)、

他にも、名古屋駅前の百貨店のバイト、酒屋のバイトと掛け持ち、
三つのバイトを器用にこなしてのバイト明け暮れ生活。
映画と、女と、車と、合コン、ナンパと、またナンパと(くどい!)

確かに、安い男の烙印。


バイトの逸話も多い。
たとえば、百貨店では、特に物産展の販売では、
威勢のいい声を張り上げていたら、百貨店の部長から、業者さん?って言われる。
この名鉄のバイトは、物産展外にも、
お中元シーズンになると、お歳暮の1日千件のアナログ作業。


そして、今度は、百貨店の家具売り場に行きなさいの命が下る。
慣れないネクタイでの接客ながら、客質も違うから大変。

物産展とは趣が違う。勝手が違う。上品さを求められる。

だが、さも、ベテラン風に売り込んでいく。

これが、認められ、私の友人と共に、
今度の要請は、事務所に入れとの命。


何が何がわからんが、百貨店の本山の事務所仕事。

難なく片付け、持て余し気味に、友人の仕事ぶり、横目で見ていたら、

上司から、外へ、呼び出された。

ひとこと、上司。

「君、サラリーマンに向いてないネ。」

この言葉が、今も耳朶に響いて離れない。


その時は、若さか、何の意味かわからなかったが・・・

時を経て、わかりましたわかりました。正解です。
(後々、社会に出てわかったこと、仕事は協調性、手が空いたら他を手伝う、
それが、サラリーマンの極意、要は組織の一員ではないと勤まらない。)

そうですか、要は僕たちは、百貨店に試されていたのですね。

そして、僕だけが、サラーリマンとしてのダメ出しの烙印を押されたのです。

その事実は、ただひとりの私に対するメッセージが、

ただひとつのアドバイスが、私の心に突き刺ささり、
その後の人生の指針の言葉となる。


それが、映画館に結果、

のちのち・・・

就職するという思いもよらないことになるが・・・。



とにかく、バイトは続いた。


「エアポート75と「かもめのジョナサン」の2本立も想い出深い。

名古屋では、それぞれの公開だったが、
当劇場では、遅ればせの公開のため、
このような変な組み合わせの2本立。


「エアポート75」は、
チャールトン・ヘストン、カレン・ブラックの活躍で、
飛行機の難を乗り越えるパニック映画の走りでもあり、
(先頭を切った「ポセイドンアドベンチャー」、「タワーリングインフェルノ」、
「ジャガーノート」、「サブウェイパニック」などパニック映画ブーム。)

この映画のラスト、ふたりがタラップを降りるときに流れるエンディング音楽が
今も耳に残る。併映の「かもめのジョナサン」は、ポエム的。
入りも良く。めでたし。


娯楽作品では、カーアクション映画の「バニシングIN60も鮮烈だった。

「ブリット」、「フレンチコネクション」でカーアクションが注目され、
そして、極めつけのカーアクション映画ブームの火付け役がこの作品。

この作品は、カースタントで名を馳せた本人、HB・ハリッキーが監督、脚本、
主演を務めあげ、現在のCGなどなしの本物カーアクションを体を張って見せた。

興行も、もちろん男性客ばかりだったが、

オールナイトを中心に凄まじい入りを見せた。

客も内容に大満足で、この映画のリアル感は、現在も語り草だ。

当時、2本立てが当たり前で、併映の「スネーク」という、

蛇が少女の口から出てくるキワモノもご愛嬌でした。


アガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」も、作品の良さに、
また、意外な犯人?達?、後から、小説の後追い読みもしました。


その後、2017年、リメイクもされました。


ドキュメント映画の
「地上最強のカラテ」というのもありました。

入りも良かったが、目玉の売りは、カラテとクマの対決、
映画自体は、しょぼかった。

また、あの大島渚のいわくつきの作品「愛のコリーダ」も忘れがたい。

わいせつ映画?(本当に性交渉してた)と世間を賑わしました。

この効果で、興行は大成功でしたが・・・。


また、カーアクション映画で「ダーティメリー・クレジーラリー」という
映画のタイトルが何故か記憶に残る。また
、「悪魔の追跡」もあった。

両作品とも、「イージーライダー」のピーター・フォンダが主演。

公開年度は前後するが、
他には、「ジョーズ」の後に、巨大グマパニックの「グリズリー」、「風とライオン」、「アンデスの聖餐」、「華麗なるヒコーキ野朗」、「ラッキーレディ」、「アイガーサンクション」、「「続・激突!カージャック」、「爆走トラック76」、「パニックインスタジアム」、「マラソンマン」、「ザ・センチネル」、「トランザム7000」、「さよならエマニエル夫人」などなど・・・。

上記のような娯楽作が並ぶ中、
コロンビア映画「タクシードライバー」という、上質の映画に出会う。

物議も醸し出す、衝撃の問題作も忘れられない。

マーティン・スコセッシ監督の世界観、主演のロバート・デ・ニーロ、

少女役で娼婦役のジョディ・フォスターの渾身の演技。

夜のニューヨーク。白い蒸気が舞いあがる中を、

黄色いタクシー、イエローキャブが

ゆっくりと走る。バックに流れるサックスの響き・・・。

もう、たまらない。

つい、映画に影響されたか、

当時、モデルガンのマグナムを買ってしまったほど・・・


このバイト、このような映画を、
見せる側の立場でいられる、ワクワクする・・・
なおさら、バイトが辞められない。

 

 

パニック映画ブームの中、「大地震」というのもありました。

これは、音響の”センサラウンド”がウリで、地震場面では、
音の波動で客席も体も揺れる臨場感だったが、これには、面白い話がある。

上映前に深夜の音のテスト上映で、かなりハイにしたため、
映画館の近所の方々が、
何事が起ったのか?と、劇場に飛んできたのだが、
説明にひと苦労したのを今日のように覚えています。

しかし、話題性の割には興行自体はふるいませんでした。

毎日、地震シーンのたびに劇場が振動するのがやっかいではありましたが・・・。

このセンサラウンド映画は、後にも、
「宇宙空母ギャラクティカ」、「ジェットローラーコースター」と続きましたが、
さほどヒットもせず、その後、製作されませんでした。

まあ、なんやかんやで、新聞広告を中心の映画館でのアルバイトは楽しく、

名鉄、酒屋、映画館の掛け持ちでの生活は続いた。

大学の授業は、ほぼ出ずに・・・。

そして、人生の転機が突然、訪れる。

そう、転機というのは、いきなりが面白い。

それは、自分の計画よりも予想だにしない方が、

私にとって、良かったみたい・・・

それは、私のバイトの後、途中から、専任の人を雇った人が病魔に倒れ、

映画館がてんやわんやする中、

その映画館のおっさん、いや、支配人から「うちの映画館に来てくれないか。

それも社員として。」の依頼。

僕は躊躇する。

映画館に就職なんて、失礼ながら都落ちみたいな思いの複雑な心境。

 

悩んだ末、3月後、親の強い反対もなかったが、空気は、望んではいなかった・・・

まあ、3年間ぐらい、やるか・・・・。の

簡単な決心で始まった。


それが、33年間も続くとは、その時、思いもよらなかった・・・。





  <第章・正社員の勤務が始まる>

1978年.

映画館の正社員として職に就く。

 

 

バイト気分はもう、なかった。

 

仕事の手順はバイトで手慣れていたので、

たんたんと進む・・・。

それも、ほとんどが一任。

まあ。まかせてくれる感がいい。

ただし、そこは新人。

映画のチョイス件はなかったし・・・、

それと、映画会社にも新人扱いだから、なおさら。

まあ、実績こそが、名刺代わり。

 

とにかく、興行という世界の仕組みを

現状を捉えながら、見据えていかなければならない。

あせりは禁物だが、即戦力を期待されてはいるのだから気合を入れる。

 

なんだかんだといっても、興行成績、実績こそが裏付けとなるのだ。

これぞ、興行界は数字のみが、力量である。

 

 

手始めの作品は、「新・バニシングIN60」と「原子力潜水艦浮上せず」の
2本立である。

「新バニシング・・・」は、強引にタイトルをつけただけで、

あのHBハリッキー作品でもないので、詐欺ですネ。

当然です。お客様も見向きもしない。
ましてや、「原子力潜水艦・・・」も、
主演がチャ-ルトン・ヘストンでも
老いては、興行サッパリ。

 

出鼻をくじかれる。
仕方がない、作品が伴っていないのだから・・・。

 

次作は、「タクシードライバー」の雰囲気をかもしだす、
「ローリングサンダー」。

これが、予想に反して、意外や意外や小ヒット。

今でもマニアには語り草の1作でもある。

 

そして、「真夜中の向こう側」と「マイ・ソング」の2本立。

これが、さっぱり。1日、10人程度の入り。

「マイ・ソング」の主題歌は良かったが、興行には反映されない。

 

その後の男女の恋愛映画「流されて」も、押して知るべし。



ここで、気分を変えて、

名作2本立を試みる。

「ベンハー」と「ローマの休日」。

私としては、初めての名作のリバイバル上映で、

半信半疑なれど、

意外にも、コンスタントな数字をたたき出す。

やはり、名作は、なおも力強い。それが名作たる由縁である。

過去に見て、再度か、年配者の客の後押しが強かった。

ただ堅実な数字だが、それまでの不入りを補えない。

 

今や、バイト気分ではないので、

気分は完全にブルー。

 

 

だが、だが、入社3ケ月目にして、

この興行界に本格的に足を踏み入れて

夏に、

早々と、ビックな作品に巡りあう。

 


それが、それが、
今も語り草の1作、

あの「サタデーナイトフィーバー」で、あります。

そう、伝説のディスコ映画の金字塔です。


ビージーズの♪ナイトフィバー、ナイトフィバー・・・♪の音楽と共に

ジョン・トラボルタの腰クネクネのディスコダンス、

全世界でも熱狂的に大ヒットしている。

これは、日本でも受け入れるはず。

こちらも、独自で宣伝に力を入れる。

 

他の映画館では過去、してなかった仕掛けを試みる。

 

この作品で僕のとった宣伝方法は、

前売り券を5枚買ったらプレゼントに

オリジナルのサダディナイトフィバーTシャツを勝手に製作した。

(今では問題ありの行動だが、販売用ではなく、販促用)

タイトルのロゴをあしらったシンプルなTシャツだが、

このTシャツが、なかなかの好評で、まとめ買いがあり、

前売り券も、マスコミの話題のあおりをあって、飛ぶように売れる。

期待は高まる。

 

さらに宣伝の手は休めず、

地元のディスコに協力を得て、出演者応募を募り、

”デイスコ・ダンス・コンテスト”を開催をする。

その模様は、三重県の地方局、三重テレビにかけあって、

音楽番組で取り上げてもらったりしたが、地方局の視聴率では、

話題にもならず、失敗したが、

だが、そこで、その後の人生の転機というか、

数年後、テレビ番組を作る、きっかけを作ることになった、人に出会う。

その人は、ディレクター兼カメラマン(当時三重テレビは予算上、皆そう)との
出会いだった。ひとりでの取材、今では考えられない。

 

のちのち、その出会いが、
私もテレビの世界にも足を踏み入れることになる。

 

それは、後ほどで、


映画館の話に戻そう。

 

 

「サタディーナイトフィーバー」は、

夏休みと重なり、連日、大入り!

若い層が大半だが、この層を、ひとたび話題になれば広がるのは早い。

ディスコブームも相成り、マスコミもさらに話題はヒート。

テレビでパロディもさかんに流れる。

当然、大成功の興行を収めた。早々と、自信をつける1作となった。

 


だが、それからも、

いけいけどんどんとはいかない。

そうは問屋が卸さないのが、業界の常。

 

その後、ブルック・シールズのデビュー作「プリティ・ベビー」。

12歳の少女が娼婦というショッキングな内容。アメリカでは話題になったが、

日本ではサッパリ。
だが今や、伝説の映画でもある。

 

映画マニアには涎モノの名作、「ミッドナイトエクスプレス」もある。

無残な興行だったが、やりがいのある骨のある作品であった。

このような映画を上映したのは誇りでもある。

 

 

やがて、1979年、正月映画。

お待たせしました。

大ヒットの「サタディーナイトフィバー」の熱気の再来を願って、

ジョン・トラボルタ主演です。
共演は歌の妖精、オリビア・ニュトン・ジョンの最強のタッグで贈る、
「グリース」だ。

この映画の買い付け額は、800万円だ。

大半の映画は、興行成績の6割が基本だが、

まさに高額な要求。

内容がミュージカルタッチを不安視。

日本では、なかなか、ミュージカルはヒットしにくい。

「サタディナイトフィバー」は、歩合だったのだが、
本作は、「サタデーナイトフィーバー」のCIC配給会社で、
バイト時代のCIC配給ということで、縁は続く。
こちらも、その配給会社で、一儲けしているので、相手も強気だ。

まあ、飲むしかない。

これが、映画会社とのしがらみでもある。

 

鳴り入りもので、フタをあければ、

予想に反して、いや、案の定。

売り上げは、1千万円。

悪くもない成績だが、プリント代が800万。

気休めの経費だけで、げんなりする。


深い深い、ため息をつくばかり。

興行とは、ほんまにバクチです。

 

 

ここは、仕切り直しの作品がめぐり合う。

 

「天国から来たチャンピオン」と「ファールプレイ」
2本立は、
映画ファンを呼び込みスマッシュヒット。

「天国からは・・・」は、一世を風靡したウーオレン・ビューティの
やさしい演技と、
心に残る感動のラストに酔いしれ、
「ファールプレイ」は、爆笑王チェビー・チェイスとゴールデン・ホーンの
豪華キャストの妙、サスペンスとコメディの融合で笑いの渦。

バニー・マニロウの主題歌も絶品。言うことなし。

素敵な2本立だった。

今までも、この主題歌を聞くと、心地いいです。

 

この2本立は、映画館冥利に尽きる組み合わせであった。

興行的には、凄い利益を上げたわけではないが、

映画界に入って、”映画っていいな~”と、

しみじみ感じた作品でもあった。

 

 

息つく暇もなく、春休みは

「大地震」でも使用された特殊音響装置センサラウンドで贈る

「宇宙空母ギャラクティカ」のスペースファンタジー。

これが、中味のない内容だから然り、興行がふるわない。

「スターウォーズ」でもない、ただの宇宙凡戦。

 

 

その後は、コロンビア映画の名作「ナバロンの要塞」の続編、
「ナバロンの嵐」は
大コケにコケ。


アメリカでは大ヒットしたジョン・ベルーシ主演の
「アニマルハウス」も

無残な
結果に終わる。
これぞ、アメリカ人好みのおバカ騒ぎ映画の極地、
日本人には、ウケる訳がない。

次の「スターウォーズ」のマーク・ハミル主演のカームービー

「コルベットサマー」も案の定の不入りが続く、
またフィギュアスケート映画「アイスキャッスル」も、ぼちぼち・・・。

とても気がめいる日々が続く。

 

興行とは、入ってナンボ。

コケだすと、映画作品の上映が、短期間、短期間で、収益は上がらず、

経費だけがかさばるという悪循環。負のスパイラルにはまってしまう。


ただし、当れば、
長ロングで経費は浮き、収益は膨大である。

だから、映画興行は水商売に似てると思いつつ、相当、きつい。
もう、私の心はおだやかではない。
この仕事、腰掛け程度と思っていても、私の微々たるプライドが許さない。

 

当映画館の映画編成のパターンは、基本的には映画会社から、

めぼしをつけた映画を狙い定め、交渉と相成るのですが、

各映画館は、不思議と、配給会社に色づけされたいきました。

当映画館も「ジョーズ」で一山や、いや、1回、金鉱脈を当てた口ですから、

この映画の配給会社の当時(CIC配給会社)に、しがらみも出来、
どっぷりのお付き合いとなるのです。

CIC配給全作品を上映の流れに
コケる映画と、わかっていて上映するの憂き目にあいます。
そのリスクも当然、抱えてのお付き合いです。

 

このCICには前記の「サタディナイトフィーバー」、「宇宙空母ギャラクティカ」、「天国から来たチャンピオン」等ありますが、他の配給会社にも頼らずには入られません。「タクシードライバー」などの有名なコロンビア映画(現ソニー)との関係も
濃密でした。
「ナバロンの嵐」、「アイスキャッスル」もコロンビア映画です。

これなど、コケると予想の結果がわかっていて、今後のお付き合いを深める為、

上映してるわけです。


このように、前記にも記しましたが、ライバルの他館も、
当然、20世紀FOX映画専門、ワナーブラザース専門、
ユナイト専門、東和専門と、色分けされていたのです。

 

「サタディナイトフィバー」以後、大当たりはなく、

興行の深さを思い知ることになる。

 

だが、

そこで、起死回生の作品が現れた。

それは、「チャンプ」である。

この作品も、「サタディーナイトフィバー」同様、CIC配給。

過去の「ジョーズ」、「エアパート75」もそうであった。

何か、縁がある配給会社のひとつでもあった。

 

「チャンプ」、お涙頂戴、これぞ泣ける!1本1

お話は、ふがいない父親が子供のために再起したボクシング。

最後は死という代償のラストの子役の演技に、
もう、場内、涙、ナミダ、涙の洪水と
言っていいほどの、すすり泣く声が響く。

“この映画で泣かなければ、人間じゃない!”そう、言わしめるほどに

口コミは凄まじく、何週経過しても、興行力は落ち事はなかった。

 

追い込みの宣伝方法は、新聞広告で、

一般人の感想を募って、ずらっと明記した。

これが功を奏したのか、なお、勢いづてくる。

今では当たり前の手法だが、

それほどの圧倒的な勢いで、興行は大成功に終わった。



この作品で、一息ついたのはいいが、

またその後が続かない。


社会現象を起こした大ヒットの「ある愛の詩」の続編が8年後、
CIC配給「続・ある愛の詩」です。

あのライアン・オニールも出てるが、

相手役がキャンディス・バーゲンとくる、何か所帯じみた地味な内容。
前作、愛妻をなくした悲劇を逆なでするような出来、
もう1本は、ジョン・タラボルタの「年上の女」の2本立。

「グリース」でケチをつけたジョン・トラボルタには、
勝手の勢いを望めず、
この2本立、憮然たる不入り。

こちらも、こんな映画、
上映して、すみません!の心境。

 


そこで、

アメリカで大ヒット、この映画の影響で殺傷事件続発の社会問題化した

これまたCIC配給の「ウォリアーズ」を上映する事になるが、

日本では、何も騒がれず、逆に反発を買うかのように、
スカスカの不入りに愕然。

「アニマルハウス」といい、「ウォリアーズ」といい、
アメリカで当ったかといって、
日本で当る保障は何もない。

 

だから、

映画の見極めは難しい。

 

お次は、

エキゾッチックな新たに製作したCIC配給「ドラキュラ」だ。

アメリカでは、大ヒットしたのだが、

到底、日本では、ドラキュラのキャラは受けないのは必然。

これも、見事なまでに大コケ。

 

つらい、つらい、本当につらい日々が続く。

 

今年は、大ヒットは「チャンプ」のみ。

 

この1本だけでは、映画経営は支えられない。

こうなると、悪循環は続く。

「愛のコリーダ」や、「カッコーの巣の上で」を再映したりと

なんか、試行錯誤奈な無茶苦茶な編成して、頭はくらくらする。

やけを起こしたくなるが・・・

ここは、我慢、我慢。

 

こうして、興行の難しさを、身にしみて感じる。

冬を間近に寒さと共に、しみじみ感じる。

 

ここは正念場。

 

1980年、

正月映画を迎える。

CIC配給「エアポート80」に託す。

「大空港」、「エアポート75」のエアポートシリーズの新作だ。

今作は、フランスのコンコルドを題材なので、

主演には、あのフランス界の色男、アラン・ドロンと

「エマニエル夫人」で名をはせたシルビア・クリステルの布陣で挑んだが、

いかんせん、話がチープで、作品内容が悪い。

併映には、クリント・イーストウッドが「ダーティハリー」のコンビ、

ドン・シーゲル監督と組んだ「アルカトラズからの脱出」も、何の力を発揮せず、

この2本立は、またまた見事な不入りで、

正月気分は一切無しのコケぶりにまたもや落ち込む・・・

 

春休みまでの繫ぎ作として、「十戒」の再映とする。

これが、意外にも、ぼちぼち入る。

名作、ここにありです。

この映画、宗教的でもありますから、ある団体が押し寄せてきて、

予想外な入りにビックリすれど、ひと安心。

 

でも、まだ悪循環は終わらない。

 

オードリー・ヘップバーンの新作「華麗なる相続人」は

オードリーの人気は、すでにピークは終えており、予想通りの惨敗。

 

その後の「オーロラ殺人事件」たるや、誰がこれを見るんや!の

上映2週間の映画館は、幽霊屋敷。人の気配無し。

一日、6人など当たり前の日が続き、

定員席300の名が泣く。

恐ろしや、恐ろしや。興行は恐ろしや・・・。

 

 

まあ、そう怯えていては、商売は成り立たない。

 

さて、満を持して、

春休みには、
「ジョーズ」、「未知との遭遇」のスティーブン:スピルバーグ監督が、

コメディにチャレンジした、鳴り入りもののコロンビア映画の
「1941」の登場である。

内容は、太平洋戦時下、日本の潜水艦がアメリカ本土近くに突如浮上し、

海辺の街はてんやわんやの大騒ぎ。

潜水艦の艦長役に三船敏郎が扮し、大真面目な演技が笑いを誘う。

 

フタを明けてみれば、

場内は、爆笑に包まれていましたが・・・

スピルバーグとしての冒険作は、「ジョーズ」や「未知との遭遇」のような
メガヒットとはならずでしたが、
一息入る、それなりの興行成績を収めました。

 

いったん、安堵。

 

だが、あのスピルバーグだからといって、
ドカ~ン!と当る保障は何もない。

興行の難しさを改めて、思い知ることになった一作でもあります。

 

 

<ここで、2年間の総括。>

今のところ、「サディナイトフィバー」と「チャンプ」の大ヒットによって、

なんとか経営は乗り切ってはきました。

もちろん赤字は出していませんが、

大きな儲けには至ってはいません。

手応えを感じるまもなく、幼子がやっとヨチヨチ歩きか伝い歩きでかしか

すすめないようなもどかしさでもありと、ぼんやりと、興行の楽しさ、怖さに触れ、日々、精一杯に過ごしてきたが・・・

 

 

私生活も、恋人の別れがあったり、

新たな人に告白されて、付き合いだしたりと・・・

波乗りな浮遊感覚なまま、

興行のむづかしさに翻弄され、生きている有様でした。

 

仕事に取り組む真面目(自分と褒めるのはちょい気がひけますが。)の裏腹と、
私生活の優柔不断さに20歳半ばの青春は、

今後の確固たる、人生の指針を示さないままに

ただひたすら、謳歌するだけです。

 

ただ、不思議に、映画館仕事は、天職とまではいきませんが、

この仕事が向いていることだけは間違いないのない事実でした。

 

 

遂に、本腰を据えて、

映画の真髄に出会うことになりました。


それが、アカデミー賞最優秀作品賞に輝く、

あの「クレイマー、クレイマー」です。コロンビア映画です。
ちょい、CICと離れての進撃です。

ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ競演、

子役が、また泣かせてくれる。

これが、これが、大ヒット!

場内を埋め尽くす人、人、

良心的な映画のヒットは、娯楽映画のヒットとは一味違い、

これぞ、またしても、映画館冥利に尽きる。

 

だから、映画館経営はたまらない。快感である。

「カ・イ・カ・ン」。

 

 

この勢いを買ってといきたいが、

その後、名のある、ロバートレッド・フォードとジェーン・フォンダの豪華競演の

「出逢い」は、旬が過ぎた組み合わせ。

予想通り、不入り。
こなるとわかっちゃいるが、

「クレイマークレイマー」でいい流れを掴んでも、ひとつの作品で

この流れは、ぶち壊し。


興行はほんまに、難しい。

 

 

そんなジレンマを抱えながら、夏の公開作品を迎えました。


テレビでおなじみのCIC配給「スタートレック」という、
マニアには涎モノの映画化。記念すべき1作目。

制作費は100億円と当時としては、破格の作品。

アメリカでは、「スターウォーズ」とはまた一味違う、
テレビで育った熱狂的なファンに後押しされ

凄まじいヒット。内容は、ちょっとアートしているのが難だが、


2本立の併映は、ライアン・オニールの娘、テイタム・オニールの
青春映画「リトル・ダーリング」

この「リトル・ダーリング」が、東京で(東京は単独公開)、
予想に反して、うれしい大ヒット。

この2本立の妙は薄いが、

結果、

「スタートレック」にはない、若者層を取り込んだのは言うまでもない。

1千万以上をあげる興行成績と、確実な数字をあげた。

大事な夏のシーズンのひと安堵である。

 

そして、

好調に波は、加速する。

 

「青い珊瑚礁」である。

ブルック・シールズ主演の南海のラブストリー。

期待はなかった。

だが、何が幸いするのかかわらないのが興行。

 

当時、ちょうどいいタイミングで発売した
松田聖子の出したシングル曲が「青い珊瑚礁」だったのだ。

これが、大ヒット。

この曲と映画は全然、何の関係もないのだが、

タイトルかぶりで、この大波を頂戴なのか、

若い観客が、わんさか、わんさか、大入り。

 

これこそ、松田聖子の影響力、恐るべし。

 

これは、棚からボタもち。

 

調子いい。

 

さあ、

今度は、

アメリカで大ヒットした「アメリカンジゴロ」で乗るぞと、かすかな希望を託す。

主題歌のブロンディの「コールミー」も売れに売れ、

主演が、この映画、直後に主演したヒット映画「愛と青春の旅立ち」の
リチャード・ギア。
まだ、この頃は、日本では無名、内容は、
タイトル通り、浮ついた、女性ナンパ映画。

話題性もあるが、日本では、どうかなを危惧?
新聞広告は、かっこよくスタイリッシュに作り、

併映には、下り坂気味のジョン・トラボルタ主演の
「アーバン・カーボーイ」では、後押しは期待出来ませんが・・・

 

やはりか・・・フタを開ければ、

いや~・・・

ちょい入り。。

ブロンディの♪コールミー!・・・♪が

むなしく場内に響くだけ・・・

 

3連勝とは、そうは問屋が卸さない。

 

気を取り直して、

次作は、「オール・ザット・ジャズ」。

ジャズ・・・

ジャズ映画で、一儲けなんて、もう夢の夢。

予想通り・・・

これまた無残な入り。

 

秋風の共に、秋の興行は、むなしい。

 

その空っ風にのって、

1981年、正月興行を迎える。

 

「フェーム」である。

ポップな踊りをテーマとして、若者の躍動感を描く小品。

正月に場内はすきま風が吹くだけの当然の不入り。

 

正月気分は、何も感じられない。

ほとんど、客が入らないのだ。

酒でまぎらしたい気分だが、

ここまで、ひどい興行に、恐れをなす。

 

外は、派手な正月に、人はみな、心躍っているのだが、

この映画館は、ひっそり、取り残されたまま・・。

 

恐ろしい・・・。恐ろしい・・・。

 

ここまで無残な入りには、驚愕するばかり。
振り返れば、映画館に身を置いて、最低の入りだった。

興行の恐ろしさをまざまざと・・・。

 

正月は書き入れ時なのに・・・

この有様。

意気消沈どころか、行く末が・・・

 

すぐさま、

1月半ばで、次の映画に変える。

 

でも、何も作品が残っていない。

結局、スピルバーグ監督ではないが、製作だけの「ユーズドカー」という
陳腐な映画で穴埋め。

まさに弱り目に祟り目。

なすすべなし。

 

その後に、「クルージング」という、

アル・パチーノ主演のゲイをテーマとした問題作を上映。

世の中のアネルギーを一身に

これも無残な入り。

 

もう三ヶ月も、場内に、またもや無残のすきま風が舞うだけ・・・。

 

とにかく、なすすべなし。

 

1番の季節。

春風にのって、

オリビア・ニュートンジョンの「ザナドウ」を上映。

♪ザナドウ~・・・ウウウ・・・ザナドウ・・・♪

主題歌にのせながら、
オリビアがローラースケートにのって歌い踊る
ミュージカル仕立てのドラマ。

オリビアひとりでは、どうにもならないが、
そこそこの入り、オリビアファンにちょい救われて・・・。

 

 

春休み到来。

遂に、あのジョン・ベルーシの「ブルースブラザース」の登場。

これぞ、カーアクションとブラックコメディのお祭り映画。

併映には、バート・レイノルズ主演の「トランザム7000」という、

これもカーアクション。

強力カーアクション2本立である。

アメリカで大ヒットだけあって、高稼働。

やはり、カーアクションものは強い。



娯楽作が続いたが、

ここで、お口直しの意味で、

 

バイト時代に人気を博した「タクシードライバー」を

あらためて、再度、上映することにする。
この作品は、映画通を唸らせた作品でもある。

ただし、最映。
この作品だけでは弱い。

併映には、新作の「グロリア」をつけた。

ジョン・カサベテス監督で、その妻が主演し、
あの「レオン」がこの「グロリア」の模倣、いやリスペクトし、
コンセプトを真似たかは定かではないが、
映画ファンにはたまらない作品。
見事な作品であった。
この2本立は、いい組み合わせでした。


当然、再映では、興行的にはふるわず。
それも納得での上映でした。

このように、覚悟をもって、上映することも、

興行者としての前を見据えて・・・。

 

 

さあ、ゴールデンウィーク映画は、

「コッペッション」。

「ジョーズ」のリチャード・ドレイファスと、
愛と青春の旅立ち」のエミー・アービング(後々、スピルバーグの元妻)
共演のラブストーリー。

この組み合わせでは、ほんど客寄せにはならない予想は的中。

興行は、さっぱり、閑古鳥が鳴くゴールデンウィーク真っ只中である。


意外にも気落ちはしていない。

そう、気落ちしては、幸運はやってこない。

悟りの境地である。と、言いたいが、

興行とは・・・何ぞやの入口に、いや、迷路に入ったような

そんな、悟りいうか・・・


シケもあれば、凪もある。

一喜一憂していては、興行は勤まらない。

覚悟のいる仕事である。


5
月後半。

巻き返しを図らなければならない。

そのチャンスが、早々、来るとは予想だにしなかった。

その映画は、

フランス映画「ガールズ」だ。

そして、シルビア・クリステル主演の少年を性に目覚めさせる

「ブライベートレッスン」の若者狙いの2本立。


これが、これが、フタを開けたら、
予想以上の大ヒット。

「ガールズ」の主題歌も評判。女の子4人の思春期物語と、

エマニエル夫人のシルビア・クリステルが家庭教師役の「青い体験」的なノリで

組み合わせの妙か、興行大成功。
もう、ビックリもの。だから、興行は何が起こるかはわからない、
それを実感しました。

 

その勢いを買って、

ジェーン・フォンダ主演のOLもの、9時から5時まで」は、

これも、スマッシュヒット。

 

のってきた、
のってきた・・・、と思いきや、
そうは問屋が卸さない。

ここから難問が始まる。

「クリスタル殺人事件」という、

「ナイル殺人事件」の流れをくむシリーズ作品の
オファーがきた。

「ナイル殺人事件」は大当たりしたが、
次々、何々、殺人事件映画が、「ドラゴン」映画みたいに増殖。
もう、食傷気味。
これでは、直感的に当たる気がしない。

配給会社が、どの劇場にも断れてきたのだろう。

やる以上、条件をつけた。


この作品を上映のあかつきに、この配給会社が決めている1982年の正月映画、

大スターを集めたカーアクションの大本命、「キャノンボール」と

ブルック・シールズの「エンドレスラブ」のラブストーリーという、

絶対、はずれない!
大ヒッ間違いなしの2本立を上映させてくれればと、

半年後を見据えて、「クリスタル殺人事件」を承諾する。


でも、案の定、この作品は大コケ。
これには、苦い後日談がある。
まあいいいか、正月映画がある。
と、思いきや、

9月になって、この口約束は

担当者が変わったという、卑怯な手口で、裏切られる。

まんまと、ワナにはまってしまった。


興行界が、すべてこうではないが・・・

その口約束した人間に問題があるのだ。と、

自分をいさめる。

 

社会人になって、平気で裏切るという、世間の洗礼を受ける羽目になる。

話を戻そう。

 

「クリスタル殺人事件」は早々に打ち切る。


その後も、他の配給会社からの嫌な予感な依頼映画。


アメリカの有名マンガの実写化。
私の子供時代にテレビアニメでウケタが、
もう、幾年か、それも実写映画化か・・・。
世代間は半端なく隔たりが・・・

 

これくる?

そう、ウケるわけがない。

アニメの実写化に興醒めに分類する。

しがらみ上、受ける。

 

結果、当然、ファミリーもこない。

一部のマニアだけがくる。

心なしか、お客様の鑑賞後の足取りが重いような・・・

なんか、つらい。

このように、映画会社とのお付き合いといえども、

ムダな映画を2作を上映していると、むなしくなる。

 

だが、

ここで落ち込んでいてはいかんいかん。

8月中旬には、コロムンビア配給の「スタークレイジー」と、

シリーズ最新作「グローイングアップ3」2本立。

「大陸横断超特急」のコンビの最新作と、
おなじみ恋に狂う青春コメディの
シリーズ3作目、
そう期待感はないが、
これが、これが、とんでもない興行力を見せる。

フタを開ければ、日曜日に800人動員の大ヒット!

ビックリ!入る入る。

お客の大半は、「グローイングアップ3」の力。
シリージ2作とも、小ヒットだったが、ここで大バケです!
若者達を、ごさっと、さらってしまう。


このように、たまに、逆転1発ホームランの快ヒットに

私、大喜び!

場内は爆笑!爆笑!で、
映画も面白い、お客様も大満足、
興行冥利に尽きる。この快感、
たまらんです。

 

 

さあ、その勢いで、
連続大当たりといきたい。


今度は、

世間の物議をかもした「愛のコリーダ」以来の

エロチック映画、「白日夢」であります。
禁断の18禁映画ですから、危険物扱い、
後は、映画館の品を落とさないかを心配。

主演の愛染恭子が実際、男優と”生入れ”という、

”アダルト映画”と言われてもしょうがないが、

宣伝自体は、武智鉄二監督作品の文芸作品を謳っていたのが救い。

併映も、樋口可南子と緒形拳主演の、これも色ぽく「北斎漫画」の2本立。
ここは、名俳優の緒形拳の名があることで、幸いに、女性も鑑賞しやすい雰囲気。


これが、またしも。おったまげの大入り満員。


土曜のオールナイトも立ち見の状態。18禁映画の立ち見です、
あり得ないような現象、

こんなの初めて。深夜も立ち見客で賑わうとは・・・

映画自体は、肩透かしものだが、

話題作ならではの快進撃の興行だった。

まあ、キワモノで当てたような心境か。

こういう時ほど、後で、ツケは回ってくるのが関の山。


私は、ここで、

映画館のイメージは、払拭しなけばならないと、

とんでもない映画企画を打った。

それは、名作再映作品の2本立。

 

「ロミオとジュリエット」と「小さな恋のメロディ」という2本立を。

若者のバイブルな名作を揃えてみた。

勝ち目は薄いと案じたが、

「白日夢」という、ちょい手垢のついた映画館のイメージを

清廉なイメージを映画館の吹き込みたかったのだが・・・


その甘い、安易な戦略は

無残にも打ち砕かれた。


ほんまに来ない。人が来ない。


案の定。

失敗。自分が過去に見て良かったからといって、それを上映する。

それは趣味です。仕事ではありません。

興行の意味は、ちゃんと把握して、
いい映画を提供するのがプロというものです。

とてもイタイ勉強になりました。

 

そこから胸に刻んだのは、“同じ轍を踏むな!”のことわざです。

 

まあ、そうたやすくないのが世に常。

 

私の興行人生は始まったばかりです。

 

早々に、打ち切り、「アラビアのロレンス」を凌ぐをうたい文句の

「砂漠のライオン」を上映したのだが、これも、やっつけでは、

サッパリ。

 


と、きたところで、もう,
1981年、お正月映画。

シルベスター・スタローンとサッカーの神様、ペレをかつぎだした

サッカーを舞台の脱獄映画「勝利への脱出」と、

カーアクション映画「ターボクラッシュ」の2本立。

 

ここから、新味の宣伝に手を出す。

 

それは、テレビでのCMスポット。

CMは、配給会社が、全国ネットでやってはいるのだが、

地方局を使う手は、全国ではどうかわからなかったが、

三重県では、初。

基本的に地方の映画館は、
映画宣伝のCMはキー局(フジテレビ、日テレ等の全国局)に頼っていたのが実情。


それを、地方局三重テレビで流してみた。

映画のテレビスポットのインパクト性もあってか。

当時、地方局は、動かない絵の宣伝が多く、

珍しさも手伝い、数少なかったが、
周りから「あんたどこ、映画のCM、流しとるのね。」と、言われ、
そう、最後に映画館名がでるから、なおさらだ。

この「勝利への脱出」では、効果は得られなかったが・・・

その戦略は、
次作の映画では、それが、効力を発揮したのが、

「郵便配達は二度ベルを鳴らす」だ。

そして、この「郵便配達・・・」の新聞広告ではオリジナルで、

独自のコピーを大胆に打って出た。

映画会社の案にもないコピーで、エロチックをさらり強調のコピーで、

 

“官能のベルを鳴らした時 女は男を激しく求めた。”

 

このコピーが、良かった定かではないが、自分なりには、

これが受けたと自負するが、

地方の中では、群を抜いて、著しい興行成績を上げた。

 

さあ、3月の声が聞こえてきました・・・。

 

春休み映画といきたいとこですが、

コロムビア映画の「パラダイスアーミー」という、コメディ映画。

 

勘でいって、これはダメな予感。

予定通り、コケ。

大コケ。

 

無情の風が、劇内に吹くが・・・

耐えるのみ。

 

さあ、気を取り直し、次の作品にとりかかる。

フランスで爆発的ヒット、

主役の女の子が、一躍、大スターになった映画、

あの、あのソフィー・マルソーです。(懐かしい!)

タイトルは、「ラ・ブーム」

これぞ、フランスのアイドル映画。

女の子が恋の階段を上がる、胸キュンもの(この言い回しも古い。)

コケてはいないが、あまり動員しない。
あのフランス映画「ガールズ」には、到底、及ばない。

ただし、日本でのソフィーの認知度は挙がったのは間違いはない。
(この映画の余談:2011年に韓国映画では、「サニー 永遠の仲間たち」で、
「ガールズ」の主題歌、この「ラ・ブーム」の音楽も取り入れられ、私はたまたま、
時間つぶして、東京の映画館シネ・スィッチで、見たのですが、
あの時代に、タイムスリップしたかのように、懐かしさにホロリでした。
「サニー」の監督も、「ラ・ブーム」が思い入れ深い映画だったのですネ。)

 

やや不満興行が続くと、ストレスがたまる。

 


ここで、他館と2館拡大の映画のお付き合い映画となる。

1本は、角川映画がちょい下火の「化石の荒野」、もう1本は、
大ヒット映画「エーゲ海の」の池田満寿夫監督の新作「窓からローマが見える」、
毛色の変わった2本立。

 

案の定、2館拡大では、来ない。

 

また悪循環は続く。

 

さて、次作は、「ロサンゼルス」。

レイプ事件を取りあっかった、父の復習劇。

きわもの扱いで、これも不入り。

次作も、まだ無名なフィービー・ケイツ主演「パラダイス」も来ない。


 

この連作障害のような、悪い流れは

とんでもない企画をうつしかない。

 

で、

 

私が、考えた、奇想天外な企画とは。

 

批評家にはうけている映画だが、

地方の映画館では避けそうな名作、

な、な、なんと、5本立。それも入替無し。

一作ごと、一日1回上映のフル5本上映。

腰を抜かしそうな企画を打つ。

 

冒険心。

この頃は、全面にまかせてもらえていたので、
下記のようなとんでもない仕掛けにも
名古屋の本社も、一切、口出しはなかった。
今となると、感謝しかない。

 

その5作品とは

ウッディ・アレンの「マンハッタン」、ハル・アシュビー監督の「チャンス」、
若きメリル・ストリープ主演の「フランス軍中尉の女」、「ジェラシー」、
ローバート・レッド・フォード監督「普通の人」と、


どうですか?渋い作品でしょう。

一般人が、あまり見ない、今で言えばミニシアター映画系。
ただ映画マニアにはたまらない上、
1日中、全作見ても、同料金という破格。

ただし、興行を預かる者には、
負け戦も同然か。
今、思えば、よく会社も、この試み、許してくれたものだ。


でも、映画館の役目は、やはり商売が先にたつが、

心意気も見せることも、
映画館の役目というのもオーバーだが、

映画館の今後の役立つと、若造のくせに、思っていた。

それが、その心意気が、
およそ20年以上経って、その”答え”が出るとは、
知る由もなかった・・・。

20代の時に、それを、未来を予測してないが・・・
50歳過ぎて、その心構えが、実行された顛末は、
この実話物語の最終章を飾ることになる。

まだまだ前半戦です。
いや、ほんの序章に過ぎません・・・。

<続く>

 第一章・第二章  第三章  第四章  最終章


















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